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高齢者=お世話される人」は日本だけ!? 世界の最先端アワードで見えた「高齢者ケア」の実態と日本の現在地
■ JUN’s letter
アジア・オセアニアの最先端ケアを審査して見えたもの
「エイジングをもっと『sexy』にしたい」。 高齢化は危機ではなく、機会(opportunity)であると捉え直し、社会保障制度のみならずビジネスの力で豊かな未来にする。これが「エイジングアジア」(https://worldageingfestival.com/waf2026)のコンセプトです。
先日、高齢者ケア界のオスカーともされる「アジア太平洋高齢者ケアアワード」に審査員として参加し、世界中から集まった約50組の革新的な取り組みを審査しました。インドネシアの保健副大臣や英国NHSの研究開発部長など、多様な顔ぶれの審査員と議論する中で見えてきた、日本と世界の決定的な「違い」をいくつかご紹介します。
世界の高齢者ケア、5つの驚きの常識
①「入院を防ぐ」は世界共通の目標
高齢化に伴う入院の増加は、世界では「国家的危機」として捉えられています。たとえばオーストラリアでは、高齢者の転倒予防に多額の積極的な投資を行っています。「何かあれば入院すればいい」という日本とはマインドセットが違います。余剰病床があり、入院回避への強いインセンティブが働きにくい日本において、患者のQOLと医療経済の最適化をどう両立するのかは大きな課題です。
②高齢者は「消費者」であり、施設は「住みたい住宅」
世界では、高齢者はケアされる存在ではなく、積極的に人生を楽しむ「消費者」として認識されています。高齢者住宅は、ダウンサイジングのためではなく、新たなコミュニティや健康寿命延伸という付加価値を得るために「積極的に選択する場所」です。日本ではいまだに家族の意向や安全管理が優先される傾向にあります。
③個人のスキルに依存しない「仕組み化」
日本では「できる専門職」「できる施設」のスキルに依存しがちな終末期ケアですが、シンガポールやオーストラリアでは、オンラインやVRも活用し、家族や地域全体でケアのプロセスを共有し標準化する「仕組み化」が進んでいます。
④孤立への関心の高さ
どの国でも高齢化と核家族化が進行する中、孤立がQOLや生命予後に悪影響を及ぼすことを重要課題と捉え、解決策をプログラムに組み込んでいる事業者が多数ありました。在宅死の多くが孤独死を含む異状死となっている日本においても、実効的なアプローチが急務です。
⑤圧倒的なスピード感とプレゼン力
世界の事業者は、ここ1~3年新しい取り組みをどんどんスタートさせ、拡大させています。「10年やって一人前」という日本の発想とはスピード感が違います。そして、自分たちの取り組みがいかに革新的かを伝えるプレゼンテーションが非常に上手です。
思考をリセットし、日本の強みを世界へ
謙遜を美徳とする日本人は、自分たちの取り組みを控えめに語りがちですが、実際には日本のケアレベルは世界的に見ても非常に高く、「イケている」部分がたくさんあります。 私自身、10年前にこのアワードでグランプリをいただき、自分たちのこれまでの取り組みへの自信とともに、世界のすぐれたプレイヤーたちの存在に「井の中の蛙」であったことを思い知らされました。
日本で医療や介護の仕事をしていると、どうしても「保険制度の中で何ができるか」に発想が固定されてしまいます。患者の利益や社会の変化よりも、目の前の点数によって行動が制限されてしまっていることはないでしょうか。
時には思考をリセットし、世界基準の視点で自分たちのケアを見直してみる。エイジングアジアは、そのための最適な舞台だと改めて感じました。