在宅医療の究み
板挟みの葛藤の先に…~まずは丸ごと受け止める
■在宅医療の究み
医療ソーシャルワーカー(MSW)としての原点:一つでも多くの「安心」を持ち帰っていただくために
医療ソーシャルワーカー(MSW)は、患者さんやご家族が抱える生活・経済面などの困りごとに寄り添い、医療や介護のかかわりを調整・支援する専門職です。働き始めてから私が一貫して意識しているのは、学生時代の実習で教わった「せっかく面談に来てくださったのだから、何か1つでも持ち帰っていただこう」という姿勢です。
深まる不安に寄り添う初期対応:「なぜ『今』相談されたのか」を紐解く丁寧なヒアリング
電話の向こう側では、どこからお話しすればよいか迷われるほどの深い不安や葛藤を抱えていらっしゃることが多くあります。 そのため、「それは大変でしたね」とまずは気持ちを受け止めながら、対象となる方の状況を丁寧に紐解くようにしています。誰のことを伝えているのか、今どんな状況か。そして何より「なぜ『今』お電話をくださったのか」という一番の不安に耳を傾けます。自院の対応範囲を超えるケースであっても、枠組みにとらわれず、「相談してよかった」と思っていただける有益な情報や次の一手をお伝えするよう心がけています。その積み重ねのおかげか、最近では地域の連携機関からも「まずは中村さんに相談してみよう」と信頼を寄せていただける機会が増え、大きな励みになっています。
板挟みも役割の一つ:双方が納得できるプロセスを支える柔軟な姿勢
また、もう一つ心に留めているのが、入職時に地域の先輩からいただいた「繋ぐことだけじゃなく、挟まれるのも仕事だから」という言葉です。以前の私は、職種間や病院とご家族との「板挟み」になり、うまく繋げないことに強いストレスを感じていました。しかし「挟まれることも重要な役割」と割り切れたことで肩の力が抜け、結果をコントロールしようとせず、双方が納得できるプロセスを柔軟に見守るよう意識するようになりました 。
双方の思いを受け止める「受容」の対人援助:感情の緩衝材としての寄り添い方
対人援助の基本に「受容」という言葉があります 。先日も、入院中の病院に対して「一度も医師と会えていない」と不満を募らせるご家族がいました。「不安ですよね。病院側も何か事情があるのかもしれませんが、ご不安な思いは私からきちんとお伝えしておきますね」とお答えしました。どちらか一方の言い分を正義とするのではなく、双方の立場や不安を一度丸ごと受け止めること。そのような緩衝材として向き合うこともソーシャルワーカーとしての寄り添い方なのだと感じます。
地域とチームに支えられて:患者さんとご家族の「納得できる人生」に寄り添う伴走者を目指して
新橋のクリニックでソーシャルワーカーは私1人ですが、理解あるスタッフや地域の温かいかかわりに恵まれ、私自身も日々背中を押されながら成長できていると感じています。これからも一人ひとりの声に耳を澄ませ、患者さんとご家族の「安心できる生活」と「納得できる人生」を共に探す伴走者として、日々精進していきたいと思います。
