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AI時代に医者は不要になる!? 久留米大学の医学生に伝えた「患者を不幸にしない医療」の真実とは

■JUN’s letter

「患者さんを不幸にしないことにプライドを持つこと」
先日、久留米大学医学部で、医学生になったばかりの学生さんたちに向けて講義を行う機会をいただきました。2.5時間の講義の後、「プロフェッショナルとして大切にしているものは何か」という問いに対して、私がお答えしたのがこの言葉です。
不可逆な病気や老化の進行とともに、人生の最終段階を生きる患者さんたちを「不幸にしない」とはどういうことなのか。在宅医療に20年間関わる中で考え続けてきた3つのポイントをお伝えします。

 

①「解釈する力」
「治す」という武器が使えないとき、医師に何ができるでしょうか。 「治せない」「近い将来の死が避けられない」という真実を伝えることは大切です。しかし、事実を突きつけて終わるのではなく、その事実に対する「解釈」を変える手伝いをすることが重要です。 「できないこと」に目を向けるのではなく、「できていること」「やりたいこと」「今からでもできること」にフォーカスする。変えられない現実を押し付けるのではなく、変えられることを一緒に探す関わりが、患者さんの人生を豊かにします。

 

②患者の言葉が、真のニーズとは限らない
抗がん剤治療を何年も拒絶し続けた40代の乳がんの女性がいました。「治療したくないならご自由に」と判断するのは簡単です。しかし、対話を重ねることで、彼女自身も気づいていなかった本当の恐怖や想いが見えてきました。 重要な決断だからこそ、患者や家族に丸投げするのではなく、「最善の選択を一緒に考える」こと。それが真の意思決定支援です。

 

③医者のコアコンピタンスは何か?
医療技術は進化し、AIが医師の知識やスキルを補完する時代が来ています。では、人間の医師の役割は何になるのでしょうか。 AIと対話する中で、AI自身が「1日だけ人間になれるとしたら、言語的コミュニケーションだけではわからない何かを体験したい」と回答したという話があります。これこそが、まさに人間にしかできないことです。 医師のコアコンピタンスは、一周回って、ただ患者の傍らにいるという「究極の非言語コミュニケーション」に集約されていくのだと思います。「真摯に向き合う」のではなく、患者の人生に「ともにある」こと。言葉がなくても分かり合え、納得し合える関係性こそが、これからの医療者に求められる泥臭くも尊い役割なのです。

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