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「間に合わない介護保険」の悲劇!? 制度の欠陥に挑む、必要な時に使える保険への7つの提言
■JUN’s letter
「間に合わない」という構造的な失敗
在宅で看取られるはずだったがん患者さんが、介護サービスを一度も使えないまま亡くなる。心不全の増悪で退院した患者さんが、要介護認定を待つ間に再入院する。 これらは個人の不運ではなく、現場で繰り返し起きている「構造的な失敗」です。
実際、国立がん研究センターの遺族調査によれば、死亡前6カ月間に介護保険を利用しなかった方のうち23%が「申請したが利用できなかった」と回答し、その約半数が認定を受ける前に亡くなっています。
制度の前提と現実の決定的なズレ
なぜ、このような事態が起きるのでしょうか。 現在の要介護認定は、「今の状態がしばらく続く」という前提のもと、「どれだけ介護に手がかかるか」を時間をかけて評価する仕組みになっています。
しかし、がんの終末期や重症心不全などでは日単位、あるいはもっと短いスパンで状態が急変します。このような患者さんにとって重要なのは、「今どれだけ介助が必要か」ではなく「いつ生活が破綻し、どれだけ急変するか」です。 「認定後給付」を大原則とし、申請から審査会まで直列で進む現在のプロセスでは、本当に必要なタイミングに支援が間に合わないのです。
必要な時に使える保険へ!7つの提言
この問題は、単なる事務処理の効率化では解決しません。 「必要に応じて認定前でも給付アクセスを保障する」という制度設計への根本的な転換が必要です。そのために、私は以下の7つを提案します。
暫定給付の「権利化」
現状機能していない暫定利用について、返還リスクをなくし、即日利用できる仮認定を仕組み化する。
急変疾患へのファストトラック
がん終末期など時間的猶予がないケースは別ルートとし、24〜48時間以内に仮認定する。
主治医意見書の二層化
忙しい医師でも5分で記載できる「緊急暫定給付用簡易意見書」を創設する。
認定調査の資料代替
退院前カンファレンス記録やサマリーなどで形式的な調査を代替し、時間を短縮する。
「急変リスク加算」の創設
急変や医療依存リスクをスコア化し、給付限度額に上乗せする。
認定遅延に対する補償
審査が法定の30日を超えた場合は暫定給付を自動発動するなど、遅延による利用者の不利益を解消する。
自治体格差の可視化と是正
自治体ごとの遅延状況を可視化し、AI一次判定などを導入して運用格差をなくす。
守るべきは審査会の権威ではなく、利用者の「時間」
この問題は、「困っている人がいる」という情緒的な話ではありません。 同じ状態の患者さんでも、住む地域や自治体の事務処理能力によってサービスを受けられるかどうかが変わってしまう。これは公平性を欠き、保険制度としての根幹に関わる問題です。
必要なときに使えない保険は、もはや保険として成立していません。 現場の限界を超えた努力に依存するのではなく、給付のタイミングそのものを根本から再設計する時期に来ています。