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「また来てね」が聞けるよう、患者さんが無理なく続けられる食事療法をアドバイス/大井 亜衣(在宅栄養部、管理栄養士)

■となりのゆうとくん

 

――仕事の内容を教えてください。
医師の指示に基づき、患者さんのご自宅を訪問して食事のアドバイスを行っています。 具体的な内容は多岐にわたり、食事全般の相談はもちろん、時には一緒に台所に立って調理指導まで行うこともあります。基本的には、月に1回のペースで訪問するケースがほとんどです。

 

全体としては、やはり「低栄養」や「嚥下障害」を抱えている方が非常に多いですね。 また、特定の疾患をコントロールする目的でうかがうこともあります。私の担当では、ご高齢ということもあり腎機能障害の方が比較的多く、透析中の方から透析一歩手前の方まで、状態に合わせてきめ細かく対応しています。

 

在宅栄養部としては、外部から依頼を受けて講師を務めたり、大学の講義を担当したりしているほか、見学のご依頼があればいつでもお受けしています。

 

 

――法人内の医科・歯科とは、どのように連携しているのでしょうか。
まず、医科とはかなり密な連携を行っています。適切な準備をしてうかがいたいので、事前に医師に「患者さんは何に困っていそうか」「特段の指示はあるか」などを細かく確認するようにしています。また、緊急性の判断も重要です。スケジュールが埋まっていても、医師が「早いほうがいい」と判断した場合は、何とか調整して翌日には駆けつけるなど、スピード感をもって対応することを大切にしています。

 

一方で、歯科との連携は、また違った心強さがあります。直接の依頼というよりは、現場での気づきを共有してもらうことが多いですね。例えば、義歯の調整中で一時的に食べづらくなっているといった情報は、カルテだけでは拾いきれないこともあります。そうした現場の変化を歯科医師から共有してもらえることで、タイムリーな食事指導につなげることができています。

 

また、嚥下の面でも役割分担ができています。患者さんから「これが食べたい」という希望があった際、歯科医師に適切な嚥下評価をお願いし、その結果を受けてわたしたちが具体的なメニューや調理法を提案する、といったかたちです。以前も「パスタが食べたい」という方の希望を歯科医師から聞き、安全に食べられるよう工夫して調理指導を行ったことがありました。

 

医科とは「治療の指針」に基づいた連携、歯科とは「食べる機能」を支えるための情報共有。かたちは異なりますが、どちらも患者さんの食生活を支えるうえで欠かせない、重要なパートナーだと感じています。

 

――仕事をするうえで、工夫している点を教えてください。
訪問した際に必ずうかがうようにしていることが二つあります。一つは「今、困っていることはないか」。そしてもう一つが「私の提案が、無理なものになっていないか」ということです。

 

わたしたちが「これならどうですか?」と提案すると、特に意欲的な患者さんほど、無理をしてでもがんばろうとしてくださることが多いのです。しかし、私の役割は、その場限りの無理を強いることではありません。ですから「がんばればできそうなのか、それとも、自然にできそうなのか。どちらの感覚に近いですか?」と、その方の本当の気持ちがどこにあるのかを意識して、確認するようにしています。

 

身体にとってよいことだったとしても、ご本人やご家族が続けられない内容では意味がありません。日常の一部として、自然に継続できることを提案したいと思っています。

 

 

――仕事をするうえで、難しいと感じるのはどういう点ですか?
患者さんご自身の「こだわり」と、私の価値観にズレがあると感じるときですね。その方にとっては当たり前の日常でも、育った環境や地域が違うと、大切にされているポイントが私の想像の範囲を超えていることがあります。自分のもっている提案の引き出しが、相手の生活とうまくリンクしないときは壁を感じます。

 

私自身、もともと都会育ちではないので、特に都心部で生活されている方との価値観を合わせるのには、今も少し苦労しています。例えば、私にとって外食は少し特別なことですが、日常的に外食されるのが当たり前という方もいらっしゃいます。そうなると、想像力が追いつかず、どんな提案なら届くのかと行き詰まることもあります。

 

また、お忙しい方ほど食生活が後回しになりがちですので、手間をかけず、身近なものでいかに健康に繋げるかというバランスの取り方には、常に難しさを感じています。実際にお話ししてみると案外すんなり解決することもありますが、やはり日々勉強の連続ですね。

 

――前職について教えてください。
新卒で回復期リハビリテーション病棟で働き始め、16年ほど勤務していました。当時は、病棟業務や外来の栄養指導、給食管理まで、幅広く兼務していました。

 

訪問栄養食事指導に初めて携わったのは10年ほど前のことです。外来診療のほか、訪問リハビリテーションや訪問診療も行う施設だったので、その部門からの依頼で、月に数件ほど、患者さんのご自宅にうかがっていました。当時は手探りでしたが、リハビリテーションのスタッフや訪問診療の医師と連携し、周囲に助けられながら経験を積ませていただきました。

 

大学卒業からずっと同じ病院に勤めていたので、悠翔会が初めての転職先です。以前の職場は、自分は一生そこで働き続けると思っていたくらい好きでした。ただ、環境やライフスタイルが変わっていく中で、前の職場での働き方に少し違和感を感じ始めたのが一つのきっかけでした。

 

――入職の決め手は何でしたか?
実は、以前から佐々木淳理事長をずっと追いかけていたのです。前職で訪問栄養指導を始めたばかりの頃にその存在を知り、それ以来、各地の講演会に足を運んでいました。他の先生方は同じ資料を使われることも多いのですが、理事長の話には毎回新しい発見があり、本当に飽きません。話自体も非常に興味深く、私にとっては長年、憧れの存在でした。

 

その後、いざ転職を考えたとき、家庭との両立も大切にしたかったので、土日には休むことができ、栄養指導を続けられる環境を探しました。そのとき、かつて携わった訪問栄養食事指導の仕事が頭に浮かび、「憧れの佐々木理事長の悠翔会ならどうだろう」と思ったことが決め手になりました。

 

――仕事のやりがいはどこに感じますか?
前職の回復期病棟では、患者さんの状態が目に見えて「改善」していくことに手応えを感じていました。ですが、在宅の現場はそれとは少し違います。

 

どこに一番やりがいを感じるかといえば、患者さんの数値的な変化よりも、お別れする際の「また来てね」という言葉や、「今日はお話が聞けてよかった」と言っていただける瞬間に尽きます。訪問のたびに、何か一つでもご本人にとってプラスになるものをお渡しできたのなら、それが私にとっての大きな収穫です。

 

――仕事への想いや、今後の目標を教えてください。
この仕事を始めて強く感じるのは、訪問栄養指導が「本来必要とされているはずなのに、まだ十分に知られていない領域」だということです。しかし、間違いなくこれからの社会で必要性が高まっていく分野ですし、その最前線を今、少し先んじて走れていることにやりがいを感じています。

 

悠翔会が訪問診療で培ってきた経験を生かし、訪問栄養食事指導においても質の高いサービスを追求していきたい。「悠翔会は在宅医療の質はもちろん、食の支援もすばらしい」といっていただけるような組織を目指し、これからも全力で取り組んでいきたいと思っています。

 

大井 亜衣(在宅栄養部、管理栄養士)

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