となりのゆうとくん

チーム全体で成長し、一人の患者さんを“診る、看る、見る”体制へ/伊禮 純子(悠翔会在宅クリニック川崎、看護師)

■となりのゆうとくん

――診療同行看護師の仕事の内容を教えてください。

出勤後はまず、前日の夜間帯に患者さんの状態に変化があったか、対応が必要な方がいないかを確認します。情報を収集して医師に共有し、当日の同行スケジュールに加えて、追加往診が必要な患者さんについて相談しながら1日の予定を調整します。通常は医師の診療に同行しますが、その合間に必要な物品の調整や発注なども行っています。

 

診療の場での基本的な役割は、バイタルサインの測定、患者さんとのコミュニケーション、診察補助や処置の介助です。また、ご家族とお話しして不安な点や今後起こり得ることについて補足したり、医師からの説明をご家族が受け止めやすいようサポートするかたちでお伝えしたりすることもあります。

 

訪問看護と比較して、わたしたちが患者さんとかかわることができる診察時間は限られています。その中で、患者さんが安心して過ごせるよう医師と連携しつつ、看護師の視点で患者さんやご家族に合ったケアを提供したいと考えています。

 

こうした診療には職種を越えた連携が必要ですので、医師だけでなく、すべてのスタッフと情報共有を重ねています。当クリニックには、非常勤を含む医師8名、看護師6名、医事課2名、相談員2名、診療アシスタント5名が所属しており、全体で連携しながら診察を進めているという感覚です。

 

 

――仕事をするうえで、特に気を遣っている点はありますか?

患者さんやご家族にとって、訪問診療は「先生に診てもらえる」数少ない機会です。だからこそ、その時間がうまく回るようにサポートすることがわたしたちの役割だと思っています。

 

ただ、診察を円滑に進めるためには、わたしたち自身も患者さんやご家族とコミュニケーションを取り、関係性を築いていく必要があります。同時に、看護師だからこそ気づけること、できることもたくさんあります。例えば、普段のおむつ交換について「こうするとご本人やご家族の負担が少ないですよ」とお伝えすることは、看護師ならではのかかわりです。そうした小さな積み重ねが信頼につながり、診察に“+α”できる看護師の役割になるのだと思っています。

 

――印象的だった患者さんとのかかわりについて教えてください。

ある患者さんに言われた、印象に残っている言葉があります。バイタルサインを測る時に、サチュレーションモニターを指につけます。その際、私はいつも自然に手を添えて測っているのです。その患者さんは、「それがありがたいのよ」と言ってくださいました。自分では何気なくしていたことが、その患者さんにとっては心地よいケアにつながっていたのだとわかり、とてもうれしかったことを覚えています。口に出してくださる方もいれば、そうでない方もいると思いますが、小さなかかわりでも喜びを感じていただけることがあるのだと感じました。

 

基本的に、私自身が患者さんを好きでいることが一番大切だと思っています。患者さんが大好きで、仕事に喜びを感じながら日々の業務に向き合っています。「この方はこういうふうに望んでいるのかな」「こういうことを求めているのかな」と考えながら動くこと、その人のために何ができるかを考えることに、私は大きな喜びを感じます。

 

――話は変わりますが、2024年の能登半島地震の際には、支援組織DC-CATの活動に参加し、輪島市門前地区の福祉避難所でボランティア活動を行いましたね。どのような経緯で参加を決めたのでしょうか。

法人内のチャットで、理事長からの呼びかけがありました。たまたまその時、私は他のクリニックに手伝いに行っていたのですが、その場に悠翔会在宅クリニック川崎の事務長も一緒にいました。そこで「私、これに行けませんか?」と相談して、その場でスケジュールを調整してもらいました。

 

クリニックに戻ると、他の看護師2名も「行きたいです」と言ってくれて、3名で行こうというかたちになりました。数日後に出発という急な日程でしたが、クリニック内での協力も得られたので、他の2名のスケジュールもすぐに調整できました。

 

――もともと災害支援やボランティアには関心があったのですか?

ボランティアには、もともと非常に興味がありました。以前、大学病院の救命救急センターで働いていた頃に東日本大震災があり、遠方から搬送されてくる患者さんを前に「看護師として自分にできることは何だろう」と考えるようになりました。突然家族を亡くした方とかかわってきた経験があるからこそ、少しでも看護師としてできることがあるのならばしたいと思い、今回の呼びかけを見た時に「これは行くしかない」と決意しました。

 

現地は震災直後の急性期から少し落ち着いたタイミングで、日常生活の援助が最も求められている時期でした。介護施設に入り、診察の介助や胃ろう・経管栄養の対応、急変時の対応など、施設内で必要とされる医療的ケアや生活支援を行いました。

 

――ボランティアを経験して、感じたことはありますか?

被災地の状況やタイミングによって必要とされる職種は異なり、その時に求められている人が入ることが大切なのだと痛感しました。例えば、震災直後の停電時なら体位変換や褥瘡処置など看護師の役割が多くなりますが、環境が整ってくれば、食事介助など介護職の方の手がより必要になります。現地のニーズに合致した支援を行う重要性は、大きな学びでした。

 

活動終了後は、ボランティアに参加したわたしたち3名が中心となり、クリニック独自のBCP対策を検討しました。職員や患者さんの災害時の出勤方法、医療機器の使用状況を把握し、避難経路や物品の確保を行いました。また、居宅の患者さんが有事にすぐ動けるよう、避難場所を記したクリニックオリジナルの防災カードも配布しています。

 

現在は川崎市中原区で、企業イベントの救護班や防災訓練にボランティアとして参加しています。被災地に行くことだけが支援ではなく、ここからでもできることがたくさんあると感じています。

 

 

――前職について教えてください。

もともとは一般企業で働いていましたが、祖父母を自宅で看取った経験から「在宅の看護師になりたい」と考え、学校に入り直して看護師になりました。

 

最初の職場は大学病院の救命救急センターで、その後は混合病棟に勤務し、病院では通算で9年ほど働きました。その後、訪問看護を2年半ほど経験しています。訪問看護は患者さんと接する時間が長く、一緒にケアを考えていける点にやりがいがありましたが、医療的な処置や診療により深くかかわりたいと考え、訪問診療を行う悠翔会に入職しました。

 

――訪問看護師の頃と、訪問診療の看護師になってからで、働き方はどう変わりましたか?

一人で訪問して異常の早期発見や連絡を行う訪問看護に対し、訪問診療では医師が隣にいてその場で相談できることが最も大きな違いです。

 

私が訪問診療の同行看護師としてしたかったのは、訪問看護師さんと医師の間をつなぐ役割を担うことです。組織が違うことによる壁が少なからずある中で、私は訪問看護の経験があるため双方の考えや視点がわかります。だからこそ、その間をうまくつなげる役割を担えるのではないかと思っています。

 

例えば、医師に対して「訪問看護師さんは、こういう意図で言っているのだと思います」と伝えたり、逆に医師の考えを踏まえて訪問看護師さんとの連携を調整したりしています。

 

――仕事のやりがいはどのようなところにありますか?

目標に一つひとつ向かって進んでいくことに喜びを感じます。当クリニックの看護師チームは本当によいメンバーがそろっており、みんなで支え合って働くことが何よりの喜びです。

 

そして、わたしたちが働くうえで大切にしたいのは、患者さんが楽しそうに生活できることです。訪問した時に1回でも笑ってもらいたい、笑顔を見たい。チームでそうしたかかわりができたときに、大きなやりがいを感じます。

 

――今後、目指したいことを教えてください。

まずは、この最高のメンバーが誰も辞めずに、生き生きと仕事を続けられる環境を守ることが第一だと思っています。

 

そのうえで、チーム全体が成長し、一人の患者さんを医療・看護・生活支援のすべてで包み込む“診る、看る、見る”体制を、クリニックの全スタッフでさらに強固にしていきたい。チームが成長すれば、よりよいかかわりができるようになります。

 

患者さんがご自宅で穏やかに過ごし、お看取りの際にも「家で幸せだった」と思える最期を迎えられるよう、私自身もスキルアップを重ねながら、さらに質の高い看護を提供できるチームをつくっていきたいと思っています。

 

伊禮 純子(悠翔会在宅クリニック川崎、看護師)

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