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HAD(在宅入院)から見えた、在宅医療の可能性と構造化の必要性/2026年5月28日

■症例カンファレンス

2026年5月28日、悠翔会の法人内カンファレンスとして、くくるホームケアクリニック南風原の医師・與儀達朗が、「フランス医療視察のご報告 HAD(在宅入院)から見えたもの」と題した報告を行いました。

與儀は2026年3月、理事長の佐々木淳、副理事長の安池純士らとともにフランスを訪問。
パリ、ニース、カンヌの医療機関や在宅医療関連施設を視察し、在宅入院、訪問看護、在宅化学療法、在宅透析支援、緩和ケアなど、多岐にわたる知見を共有しました。

報告の中心となったのは、フランスの在宅入院制度「HAD」です。HADは、Hospitalisation à Domicileの略で、日本語では「在宅入院」と訳されます。通常であれば入院が必要な医療を、患者さんの自宅や介護施設などで提供する制度であり、法的にも「入院」として扱われる点が特徴です。

HADでは、在宅化学療法、輸血、PCAポンプ管理、陰圧閉鎖療法、術後管理、緩和ケア、周産期ケアなど、病院で行われるような医療が在宅で展開されています。その中心を担うのは看護師です。調整看護師が患者評価やチーム編成を行い、訪問看護師が現場で臨床判断や治療調整を担います。医師は主にオンラインで指示を出す役割であり、現場に頻繁に訪問する日本の在宅医療とは構造が大きく異なりました。

一方で、與儀は「日本の在宅医療は、フランスと比較しても遜色なく、むしろ手厚い側面が多い」とも述べました。日本には、医師の定期訪問、24時間対応、医療と介護の連携、生活や家族を含めた包括的な支援があります。これは大きな強みです。

しかし、その強みは同時に課題でもあります。日本の在宅医療は、現場の誠実さや個人のがんばりによって支えられている面があり、バーンアウトや属人化、休みにくさにつながる可能性があります。フランスでは、看護師の自律がプロトコルや専門資格、分業の仕組みによって支えられており、「能力」ではなく「構造」として臨床判断が守られている点が印象的でした。

報告では、今後の悠翔会に生かせる視点として、「夜間に対応する医療」から「夜間に困らないように設計する医療」への転換が示されました。たとえば、在宅導入時に想定される急変パターンを本人・家族・医療者で共有する「予測カンファ」、家族向けの夜間連絡ガイド、看護師の判断を支えるプロトコル、専門看護領域のラダー化、臨床判断の振り返り会などが挙げられます。

また、緩和ケアの専門性を病床に閉じ込めるのではなく、地域に出していく「モバイル専門チーム」の考え方や、家族介護者を単なる支援者ではなく「ケアの対象」として位置づける視点も共有されました。

最後に佐々木からは、訪問診療は目的ではなく、患者さんが安全な療養生活を継続するための手段であるとのコメントがありました。日本にも、在宅化学療法、感染症治療、退院直後の集中フォローなど、制度を組み合わせることで実現できる領域は多くあります。

「できるか」ではなく、「できる構造をどう設計するか」。今回の報告会は、日本の在宅医療の強みを見つめ直すとともに、その強みを持続可能な仕組みへと進化させていくための重要な機会となりました。

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