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正解のない支援を、チームで考える――臨床倫理カンファレンスより
2026年6月11日、悠翔会の法人内カンファレンスとして、看護小規模多機能型居宅介護もりやの現場から、パーキンソン病を抱えながら独居生活を続けるS.Jさんの事例が発表されました。
S.Jさんは70代後半。夫との死別後、友人や近隣住民の支援を受けながら、自宅での一人暮らしを続けてきました。水彩画を描くことが好きで、自宅にはこれまでに描かれたたくさんの作品が飾られています。一方で、パーキンソン病の進行により、低血圧による意識消失や、身体が思うように動かなくなるオフ症状が増え、日常生活を一人で維持することが難しくなっていきました。
特に支援者が悩んだのは、頻繁なオンコールへの対応でした。「近いのだから少し見に来てほしい」「声を聞いて安心したかった」などの連絡が続き、本人の不安に寄り添いたい気持ちと、すべての希望に応えることで依存関係を強めてしまうのではないかという迷いが生まれていました。また、オンコールでは対応できないことを伝えるたびに、支援者側にも罪悪感やストレスが積み重なっていきました。
今回の発表では、こうした“もやもや”そのものを臨床倫理の入口として捉えました。臨床倫理とは、単に正解を出すことではなく、本人の希望、生活上のリスク、支援者の限界、家族のかかわりを丁寧に見つめながら、よりよいかかわり方を考え続けることです。
その後、事例は臨床倫理カンファレンスや在宅関係者の勉強会でも共有され、看護小規模多機能型居宅介護もりや内でもケア会議を実施。弟さんにも状況を伝え、ご本人・ぎ家族・支援者で今後の暮らしについて話し合いを重ねました。あわせて、日中や夕方のかかわりを厚くし、夜間に不安が集中しないよう支援を整えたことで、頻繁なコールは大きく減少しました。
本人の望みを大切にしながら、支援者だけが抱え込まない体制をつくること。今回のケースは、在宅療養を支える現場において、迷いや葛藤をチームで共有することの大切さを示すものでした。
