ニュースレター
カルテの向こうにある、その人らしい生き方を支える/福原 美帆(くらしケアクリニック城東、MSW)
■となりのゆうとくん
――医療ソーシャルワーカーとしての仕事の内容を教えてください。
主な業務は、訪問診療を新しく希望される患者さんの窓口となり、情報収集や当院での対応の調整を行うことです。医師がスムーズに診療を開始できるように準備することが、一番大きな役割だと思っています。
当院は訪問診療に加えて外来診療も行っていますが、私は主に訪問診療を担当しています。緩和ケアを必要とする患者さんにおいて訪問診療への移行ニーズが非常に高いことがわかってきたため、必要に応じて、外来の患者さんにも対応しています。
訪問診療への切り替えに関するご相談が最も多いのは、金曜日の安池純士医師による緩和ケア外来です。「通院を続けてきたけれど病状が変化し、今後の通院が難しくなるかもしれない」というタイミングで、切り替えの準備を進めています。こうした外来と連携した柔軟な動きができる点は、外来診療を持たない他のクリニックにはない、当院のソーシャルワーカーならではの役割だと感じています。
4月からソーシャルワーカーが3人体制になったことで、すべての患者さんのサービス担当者会議に出席できるようになり、地域とのつながりを作るための動きが少しずつできるようになってきました。
――仕事をしていく中で、特に気を使う部分はありますか?
私はもともと精神科病院のソーシャルワーカーを務めた後、地域のデイサービスで長く管理職として働いていました。悠翔会に入職したのは半年前なのですが、医療の専門性、特に身体的な疾患については、医療を提供する側として日々勉強を続けている状況です。
自分の知識不足によって患者さんに不利益が生じたり、医師が困ったりすることがないように、という点が一番緊張します。今でも力不足な面が多く、その都度周囲にフォローしてもらいながら対応しています。
ただ最近になって、過去のケースを調べて答えにたどり着く、という仕事の進め方が身についてきました。以前はわからないことがあると丸ごと周囲に確認するしかなかったのですが、今は事前に調べたうえで、要点を絞って確認できるようになってきたと感じています。

――難しいと感じるのは、どんな点ですか?
病院のように、病室に行けば患者さんに会える環境とは異なり、訪問診療では、まだ直接お会いしていない段階で、紙の情報と事前のやりとりだけで必要な医療や支援を見極めなければなりません。ご本人の状態を直接見られない中で、何が必要でどのような準備がいるのかを想像しながら進めていく点は、訪問診療ならではの特徴であり、非常に難しい部分だと感じています。
――印象に残っている患者さんについて教えてください。
ソーシャルワーカーは初診時にしか患者さんにお会いするチャンスがないことが多く、その後はカルテを通じて状況を追うことになります。どの方のケースを見ても、その方の生き方そのものが現れると感じています。
特に印象に残っているのは、ご自身で銭湯を経営されていた女性の患者さんです。病気がわかってからも最後の最後まで番台に立ち続け、治療が難しくなってからご自宅に戻ってこられました。退院直後はまだ普通に会話もできていたのですが、あっという間に最期の時が近づいてきました。
その患者さんは、まるで主治医が来るのを待っていたかのように、医師たちが見守る中で息を引き取られたそうなのです。緊急の往診ではなく、いつもの定期診療を待って医師に看取られるというのは、計算してできることではありません。一生懸命に働いて生きてこられた方の、芯のある見事な最期だなと、カルテを追いながら非常に心を動かされました。
私はまだそこまで深く患者さんにかかわれているわけではありませんが、将来的にはそれぞれの患者さんの人生に、しっかりとかかわっていけるソーシャルワーカーになりたいと思っています。
――“待合室開放日”について教えてください。
当院では以前から、外来の休診日には待合室を開放し、外来看護師が中心となって地域の方々を対象としたイベントを行っています。これまでもさまざまな企画を催し、地域の福祉センターや子ども家庭支援センターとも深くつながりながら活動してきました。
私が入職してからは今回が初めての開催となります。わたしたちソーシャルワーカーも、地域の方々に当院を知っていただき、気軽に足を運んでもらう役割の一端を担いたいと考え、「相談員としてできること」「わたしたちの専門性を生かせること」をテーマに、企画の一枠を担当することになりました。
――今回、ソーシャルワーカーとしてどのような企画を考えたのでしょうか?
相談員が一対一で受ける「相談会」よりも、同じ悩みを抱えるご家族同士が支え合える「家族会」のような場をつくりたいと考え、スタッフがハンドドリップで淹れるコーヒーをお出ししての「ほっと一息、家族の茶話会 くらしケアカフェ」を企画しました。私は精神科病院や前職の介護施設でも家族会を立ち上げてきましたが、当事者同士だからこそ想いを分かち合える場には、非常に大きな意義があると感じています。
まだ患者さんやご家族との信頼関係を築いている途中のため、不安もありましたが、院長からも背中を押してもらい、チャレンジすることにしました。
初診時だけでなく、こうした場を通じてご家族との継続的な関係をつくっていきたいですし、ニーズがあれば今後も定期的に開催したいと考えています。ただ、ご家族が患者さんを置いて外出する難しさもあるため、開催時間や方法などは今後の状況を見ながら工夫していく予定です。
――悠翔会への入職のきっかけを教えてください。
前職の社会福祉法人が、介護報酬改定などの影響による経営難で事業を閉じたことが直接のきっかけです。次のステップを考えるにあたり、病院や施設などの「箱物」ではなく、住み慣れた地域や自宅で暮らす人々を支える仕事がしたいという思いが強くありました。
悠翔会については、佐々木理事長の発信を通じて以前から認識していました。また、当時私が働いていた葛飾区での地域の取り組みに参加した際、悠翔会の医療への姿勢に触れる機会があったほか、前職のデイサービスの利用者さんや、自分の家族がお世話になっており、非常に身近で信頼できる存在でした。
当初は長年ネットワークを築いてきた葛飾での勤務を希望していましたが、当院に外来診療があり、他の拠点とは違う業務の幅広さやおもしろさがあると感じたこと、そして「くらしケア」という、暮らしや生活を何より大切にする姿勢が伝わる名前に深く共感したことが、当院への入職の決め手となりました。
――実際に入職してみて、イメージとのギャップはありましたか?
一番のギャップは圧倒的なスピード感です。また、これまで介護の世界では自分が若手だったのですが、当院はスタッフが皆さん若く、その年齢層の逆転にも驚きました。若いスタッフたちが自立し、自分の判断で生き生きと働く姿には、日々新鮮な刺激を受けています。「年齢は関係ないのだな」と気づかされ、こうした環境で充実して働けることにとても感謝しています。
――どんなところに仕事のやりがいを感じますか?
ベースにあるソーシャルワークの基本はこれまでの経験とつながっていますが、日々の業務やITツールの活用など、新しいことの連続です。次々に起きる物事に対して、自分が前線に立って対応していく緊張感には、大きなやりがいを感じています。
現在は以前よりも患者さんと直接かかわる機会が減り、その点は少し寂しくもありますが、今後は自分の役割をしっかりと全うする中で、また違う視点から患者さんとの接点を増やしていきたいと思っています。新しい挑戦を続けながら、これからの関係性を築いていけることを楽しみにしています。

――今後の目標について教えてください。
まずはソーシャルワーカーが3人いる中で、全員が同じように業務を標準化してこなせることが大前提だと考えています。そのうえで、私の強みである「地域とのネットワークづくり」や「介護保険を利用しながら長く療養されている方への支援」を生かしていきたいと考えています。同時に、まだ経験の浅い、がんの緩和ケアについても深く勉強し、病気があってもその方らしく最期まで生きることを支えられるようになりたいです。
日々の業務では、どうしてもミスを起こさないことばかりに意識が向きがちですが、それはあくまで土台に過ぎません。患者さんや本、映画など、あらゆるものから人生の多様性を学び、知識を深めることで、「病を抱えた方が、どのような思いで療養場所を選び、一日一日を生きているのか」に、いつでも心を寄せられる人間でありたいと思っています。