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お部屋の飾りが教えてくれること/伊野部 容子(悠翔会在宅クリニック川口、院長)

■在宅医療の究み

 

訪問診療では、患者さんのご自宅や施設のお部屋にお邪魔します。

長く住み続けられた馴染みの空間もあれば、入居直後のシンプルな部屋もあり、空気はさまざまです。

 

壁や棚に飾られた写真も、家族やペット、「推し」のものなど多様です。また、見事な絵画や書の掛け軸、季節ごとの俳句の色紙、丁寧に作られた編み物や刺繍などを拝見することもあり、そのすばらしさや風流な和の心に深く感動させられます。

 

時には、「もう最近は気力がなくて」と寂しそうにされ反省することもありますが、「これも昔作ったの」と誇らしげに言われると、尊敬と感動でついお尋ねするのをやめられなくなります。

作品を褒められた時に見せる、それまでの「患者の顔」とは違う「作家」の顔や本来の「素」の表情。わたしたちはその特別な瞬間を見たくて、ご様子をうかがいながら積極的にお部屋の品々を拝見しています。

「この人は、これまで何をしてきたのだろう」という純粋な好奇心から、素直に聞き合える関係性を築くこと。それは、病気の治療だけでなく「その人の生活を支える」という視点を持てたからだと思います。

 

 

長くお付き合いをする中で、認知症の進行や体力の衰えにより、そうしたお話ができなくなる局面を迎えると、寂しさが募ります。しかし、それも人の定めと受け止めつつ、その時を少しでも遅らせ、ぎりぎりまで楽しさを語り合える手助けができるよう、日々の臨床において精進しなければと思いを新たにします。

 

病気の痛みや苦しみを取り除く努力を尽くすのは、医療者として当然の役割です。そのうえで、「その人らしさを大事にする」とは一体どういうことなのか。突き詰めれば、その方が紡いできた人生を「理解」して「リスペクト」し、心から共感すること。

 

これに尽きるのではないかと考えます。

 

人生の先達に学ぶ心をもって。

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