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「社会保障は経済の足かせ」の大誤解!? 医療・介護を“投資”に変える3つの戦略とは
■jun’sLetter
社会保障は「支出」ではなく「未来への投資」
衆院選での自民大勝から2週間が経過し、高市政権は「責任ある積極財政」を軸に社会変革を進めています。一方で、財政難を背景に、医療や介護などの社会保障費を「経済の足を引っ張る消費的支出」とみなす厳しい意見も存在します。 しかし、日本の経済が生産年齢人口の減少にもかかわらず持ちこたえてきた大きな要因は、高齢者や女性の就労率の上昇であり、それを可能にしたのは医療と介護という基盤です。社会保障は単なるコストではなく、国力を支える「内なる国防」であり、中長期的な「社会投資」として捉え直すべきです。
医療・介護を成長の原動力に変える3つの戦略
単なるバラマキや一律の支出削減ではなく、日本の成長に資する社会投資として制度を再設計するためには、以下の3領域に優先的に取り組むべきだと考えます。
1.介護の社会化(家族介護の外部化)
現在、訪問介護の不足などにより家族への介護依存が高まっています。経済産業省の試算では、2030年に「ビジネスケアラー(働きながら介護する人)」は318万人に達し、その生産性低下による経済損失は9兆円に上るとされています。介護を社会化し、家族の負担を軽減して労働参加を促すことは、事実上の経済成長政策と言えます。
2.就労世代・予防医療への集中
慢性疾患やがんの早期発見・継続的管理は、将来の総医療費削減だけでなく、働き盛りの離職を防ぎます。しかし現在の制度は予防領域のカバーが不十分です。また、高額療養費の見直しで自己負担が増加すれば、将来不安からの「予防的貯蓄」が増え、結果的に内需を抑制する恐れもあります。いざという時に破滅的な負担を避けられるという安心感は、経済成長に不可欠な前提条件です。
3.高齢者医療の適正化(「壊さない医療」へ)
国民医療費の半分を消費する70歳以上の高齢者医療費、とりわけ85歳以上の高齢者の入院を適正化することが改革の本丸です。具体的には以下の3つが鍵となります。
・重症化予防:85歳以上の入院の多くは肺炎や骨折などの脆弱性疾患です。栄養介入や口腔ケア、リハビリでこれらを未然に防ぐことが、最も費用対効果が高いアプローチです。
・入院予防(在宅入院):諸外国で成果を上げている「在宅入院(Hospital at home)」を普及させ、急性期でも過度な入院に頼らない選択肢を一般化すべきです。
・ACP(人生会議)の実践:本人や家族との継続的な対話を通じて最善の選択をともに考え、結果として不必要な過剰医療を回避するプロセスが重要です。
「治す医療」から「壊さない医療」へ
高齢者医療費の問題の本質は、「急性期・病院・フルスペック医療に自動的に流れる構造」にあります。制度や私たちのマインドセットを「治す医療」から「壊さない医療」へと転換することで、高い生活の質(QOL)の維持と医療費の適正化は両立できます。 医療や介護は経済成長の足かせではなく、むしろ成長を促進するインフラとして、中長期的な視点で再設計していく必要があるのです。