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「深夜の看取り往診」は本当に必要なのか!? 過剰対応が生む在宅医療のジレンマ

■JUN’s letter

「夜中の往診」は誰のためか
看取りのために、夜中に急いで往診する必要は本当にあるのでしょうか? パリの在宅医(在宅入院)は、日本の在宅患者よりも医療依存度が高い患者を診ているにもかかわらず、時間外の往診はほとんどしないといいます。医師が往診して行うことの多くは看護師にもできますし、何より「緊急で死亡診断を行っても結果が変わるわけではない」からです。

理屈としては全くその通りです。しかし、それでも僕たち日本の在宅医は夜中に看取りに行きます。これは「患者さんのため」というよりも、ケアマネジャーや訪問看護師などの多職種チームに対して「自分たちはちゃんと仕事をしている」と示すための行動なのかもしれません。

 

都市部の在宅医療が抱える「過剰対応」のジレンマ
特に在宅を専門とするクリニックが急増している東京では、この問題は深刻です。 たとえ近い将来に亡くなることが避けられない、看取り前提の患者さんであっても、深夜2時の心肺停止の確認を朝まで待たせると「態度が悪い(=診療の質が低い)」と評価されてしまうことがあります。

在宅医療の患者さんの多くは紹介によって成り立っています。「あのクリニックは質が低い」とみなされれば、紹介が途絶えてしまうという恐怖が常に頭をよぎります。そのため、都市部では結果として、医療的な必要性が低い「過剰な診療対応」が選択されることが多くなっているのが実態です。

 

本来、看取りは「緊急往診」の対象ではない
もちろん、予想外の急変や、経過が早すぎたケース、ご家族の心の準備ができていなかったケースなどには、迅速に対応すべきです。 しかし、予測された看取りに対する夜中の死亡診断は、特別な理由がない限り急ぐ必要はありません。

重要なのは、本人や家族の「覚悟(心の準備)」と、多職種の「経過への理解」です。 心肺停止時の積極的治療を望まないのであれば、大急ぎで医者を呼んで慌ただしく過ごすのではなく、ゆっくりと家族だけで最期の時間を過ごす。そして、医師は翌朝、落ち着いたころに訪問する。継続的な関係性の中で、あらかじめ患者さんやご家族とこうした「納得感」を築けていることの方が、はるかに重要ではないでしょうか。

 

「急がない看取り」は質が低いのか?
このような「急がない看取り」は、本当に診療の質が低いといえるのでしょうか。 看取りのあるべきかたちについて、一度、医療・介護にかかわる全員で腹を割って話す時期に来ていると感じます。もちろん、いざという時に対応しない在支診(在宅療養支援診療所)はいりません。しかし、ただ夜中に駆けつけることだけを「質の高さ」とする風潮には、一石を投じる必要があると考えています。

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