ニュースレター

「新しい認知症観」は万能ではない

本人・家族・社会のバランスを考える

 

2026年7月23日、悠翔会の法人内カンファレンスとして、繁田雅弘先生に(医療法人社団彰耀会栄樹庵診療所、院長)よる講演「私たちの認知症観はどこまで来ていて、これからどこに行くのだろう?」を開催しました。

 

 

これまで認知症のある人は、事故や混乱を防ぐために「保護・管理される対象」として捉えられがちでした。しかし現在は、基本的人権を持ち、自らの意思を表明し、社会に参加する主体として尊重する考え方へと転換しつつあります。また、暮らしにくさの原因を本人の能力低下だけに求めず、制度や環境など、社会側の障壁を取り除くという視点も重要です。

 

一方、繁田先生は「新しい認知症観」を無条件に正しいものとして扱うことへの注意も促しました。前向きに思いを語れる軽度の当事者だけでなく、症状が進行し、声を上げにくい人もいます。本人の意思を尊重するあまり、介護する家族の疲労や罪悪感が見過ごされてはなりません。本人と家族のどちらか一方に偏るのではなく、双方の思いや負担を丁寧に調整することが現場には求められます。

 

繁田先生は、これからの30年にわたしたちが直面する岐路として、血液検査などの進歩によって生活全体が医療の管理下に置かれる「超医療化」、介護人材不足を背景とした「家族主義への回帰と管理社会化」、そして「勝利の指標を書き換えること」の3つを示しました。

 

技術や制度を一律に導入するのではなく、本人が何を望み、どこまでのリスクを受け入れるのかを確認することが欠かせません。安全を優先するあまり、外出や買い物など、その人らしい生活まで奪ってしまう可能性があるためです。

 

認知機能の数値を改善することだけを「勝利」とすれば、進行性の認知症ではいつか負けてしまいます。しかし、「自分らしく生きること」や「大切な人と過ごすこと」を指標にすれば、認知症があっても人生に勝利することはできます。

 

医療・ケアの専門職には、できないことを管理するのではなく、その人が持つ選択肢や可能性を広げる姿勢が求められています。

ページ先頭に戻る