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〈JUN’s letter〉外国人介護職の“強み”を活かす。認知症ケアにおける可能性

外国人介護職は「日本語能力や文化の違いが問題」と語られることが多いですが、私はむしろそれが強みになり得ると考えています。現場で感じるいくつかのポイントをご紹介します。

 

1. 非言語的コミュニケーションの強み
日本語が母語でない分、言葉以外の情報ーー表情、声のトーン、体の動き、呼吸の変化などーーを敏感に読み取ろうとする習慣が根付いています。認知症ケアでは言葉で意思を伝えにくいケースも多く、この「非言語的察知力」は大きな武器になります。

 

2. 文化的背景から生まれる敬意
多くのアジア諸国では年長者への敬意や家族的なケア文化が根付いています。あるフィリピン出身のスタッフは「介護は仕事ではなく、人としての務め」と語ってくれました。この価値観に基づいた丁寧なかかわりは、利用者に大きな安心を与えます。

 

3. 仕事への強いモチベーション
外国で資格を取得し、生活基盤を築くという挑戦には強い目的意識が伴います。日本で専門職としてのキャリアを切り拓こうとする積極性が、日々の真摯な姿勢や入居者との関係性にも表れています。

 

4. 認知症ケアとの相性
認知症の方は大脳辺縁系や脳幹レベルの情動系が活発なため、言葉よりも感情や雰囲気に敏感です。外国人介護職が見せる柔らかな笑顔や優しい声かけは、安心感につながりやすいのです。

 

5. 現場での実感
私がかかわる特養でも多くの外国人介護職が活躍しています。彼らはとにかく明るく、怒りを表に出さず、忍耐強く認知症の方に寄り添っています。さらに診察時には「少し気になる変化」を丁寧に報告してくれる。これは日頃から観察・評価を欠かさない証拠です。

 

介護の価値は、日本人か外国人かではなく、専門職としての力量と誠実さで決まります。外国人介護職を「日本人に近づける」のではなく、彼らならではの強みを活かせる環境を整えることが重要です。そのためには、受け入れる事業者や監理団体が、彼らの成長を支援しキャリアにつなげる仕組みを確立する必要があります。

 

そして、日本人介護職もまた「外国人に教える」だけでなく、彼らから学ぶ姿勢を持たなければなりません。国籍でマウントを取るのではなく、互いの強みを尊重し合うチームづくりこそが、これからの介護の質を左右します。

 

外国人介護職の力を活かせるかどうかーーそれは、日本の介護業界の未来に直結しているのです。

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