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〈JUN’s letter〉【医療改革提言】「病院依存」を終わらせる 真に評価すべき4つのポイント

現在進行中の診療報酬改定に関する議論の中で、往診や看取りの実績が多い医療機関へのさらなる評価が検討されています。しかし僕は、個人的な意見として、この方向性の評価は「もうこれ以上しなくていいのではないか」と強く提言しています。

 

なぜなら、往診実績が多いことは、平時の医学管理が不十分で急変・増悪が多い可能性や、訪問看護との連携がうまくいかず医師が全て対応せざるを得ない状況、あるいは単純に往診料を稼ぎたいという側面も含む可能性があるからです。看取り実績の評価についても、患者の意向や介護力を無視した「無理やり自宅で死なせる在宅医療」が蔓延する懸念があり、看取り援助の実務を担う看護・介護職ではなく医師の死亡診断ばかりに加算されることへの違和感も示されています。

 

そこで僕は、在宅医療が目指すべき理想と社会的なニーズに基づき、真に評価し、制度設計を施すべき4つの領域を提案しています。

 

① 退院支援の強化とインセンティブ設計
現在、がん患者のほとんどが、当事者の意向に反して一般病院で亡くなっている現状があります。この状況を改善するため、通院可能な患者に対しても在宅緩和ケアが関われるよう、進行がん患者に対する在宅へのアウトリーチを特例的に評価することや、二人主治医体制を推進する病院を評価する仕組みが提案されています。また、早期退院に積極的に取り組む病院の評価を厚くするため、疾患ごとの標準入院日数を定め、それよりも早く退院できた場合でも標準日数分の入院診療費が受け取れるようなインセンティブ制度設計が求められています。

 

② 退院直後の再入院抑制体制の構築
退院直後の支援体制は喫緊の課題です。特に食支援の領域が非常に弱く、患者は入院前食べていたものが食べられなくなって自宅に帰ってくることが多いです。再入院の抑制に不可欠な支援として、訪問看護の複数回訪問を高く評価すること や、退院直後の一定期間、訪問栄養食事指導を「特別訪問看護指示」のように弾力的に導入できるようにすること、また退院前共同指導への在宅側の管理栄養士の参加を評価することが提案されています。

 

③ 在宅緩和ケアの対象拡大と利用の柔軟化
在宅がん医療総合診療料が医療機器のコストを請求できないために、医療依存度の高い末期がんに使いにくいという問題が指摘されています。この制度を本来の意図に沿って活用するため、医療機器のコストの一部を請求できるようにすべきです。さらに、対象疾患を末期がんだけでなく、末期心不全、呼吸不全、腎不全、肝硬変、慢性重症感染症など、高度かつ高密度な緩和医療を必要とする疾患群に拡大することが望まれています。

 

④ 在宅急性期治療(Hospital at Home)の充実
入院を希望しない患者に、自宅で治療するという選択肢を保証することが重要です。日本以外の多くの先進国では在宅急性期治療が通常の選択肢となっています。特に在宅治療ニーズの高い肺炎治療について、在宅酸素を保険適応にしてほしいという要望があります。さらに、台湾やフランスのように、医師と訪問看護師による急性期治療を包括評価する仕組みを検討すべきだと提案されています。この「在宅入院」モデルは、複数の国で費用対効果と患者満足度において入院に対する非劣性(あるいは優越性)が検証済みです。

 

僕は、単体のプロセス評価を続けるのではなく、技術革新や患者ニーズの変化を踏まえ、病院と地域の最適な役割分担を再定義し、地域で患者を面で支えるための仕組みづくりを促進するような診療報酬制度の実現を強く望んでいます。

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