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在宅医療の意思決定支援とは─その人らしさとともに /三浦 久幸(臨床研究センター、センター長)

■在宅医療の究み

私は長らく病院勤務医として診療に携わり、昨年から訪問診療に従事しています。病院医療と在宅医療ではさまざまな違いがありますが、その中でも大きな違いの一つが、患者の意思決定支援のあり方ではないかと感じています。

 

病院では、限られた時間の中で病状説明や治療方針の決定が行われることが少なくありません。特に認知機能が低下した患者では、その時点の意思表出のみで将来の医療やケアの方向性を判断することが難しい場面も多くみられます。一方、在宅医療では患者の日常生活や家族背景に触れる機会が多く、その人が何を大切にして生きてきたかを理解する機会があります。

 

こうした場面で、意思決定支援はしばしば「延命治療を希望するか否かを確認すること」と捉えられることがあります。しかし実際には、それほど単純なものではないと感じています。患者の思いは変化することがありますし、ご家族の考えも時間とともに変わります。さらに、認知機能低下を伴う患者では、その時点の発言のみでは十分に本人の価値観を反映できない可能性があります。

 

そのため、意思決定支援は単発の確認作業ではなく、継続的な対話のプロセスとして捉える必要があります。Shared Decision Making※(共同意思決定)やAdvance Care Planning※(ACP)は、そのための重要な概念です。重要なのは、医療者が選択肢を提示して結論を導くことではなく、患者・家族・医療介護職が価値観を共有しながら方向性を考えていくことだと思います。

 

今後、高齢化が進む中で認知機能が低下した患者への支援はさらに重要性を増していくと考えられます。在宅医療の現場は、その人らしさに基づいた意思決定支援を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれる場であると感じています。

 

※Shared Decision Making(共同意思決定:SDM) 医療者が一方的に方向を決めるのではなく、患者の価値観や生き方を大切にしながら、医学的な情報を共有し、対話を通して共に意思決定を行うプロセス
※Advance Care Planning(人生の最終段階における医療・ケアの事前話し合い:ACP) 将来に備え、望む生活やケアを本人・周囲が繰り返し対話するプロセス。単なる医療の選択や契約ではなく、日々のかかわりそのものがACPとなります。

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