ニュースレター

「安楽死」に揺れるフランスの実態とは!? パリ最古のホスピスが提示する“尊厳”の本当の意味

■JUN’s letter

 

パリ最古のホスピス「Maison Médicale Jeanne Garnier
ヨーロッパ最古・最大のホスピスであるパリの「Maison Médicale Jeanne Garnier」を見学しました。カトリック教会を母体に150年前に創設されたこの施設は、出自や宗教にかかわらず患者を迎え入れ、その人の選択を尊重し、病の初期段階から生活の質を確保することをコンセプトに掲げています。 81床の緩和ケア病棟を中心に、デイホスピスや外来、地域緩和ケアチームなど7つの機能を組み合わせ、「早期からの緩和ケア」を重視して患者や家族に伴走しています。

日仏の在宅緩和ケアの比較
昨年から本格稼働したという同施設の在宅緩和ケアチームは、医師と看護師がペアで訪問し、麻薬(オピオイド)を持参して迅速な処置を行います。しかし、休日・夜間の緊急対応体制は確保されておらず、在宅での看取り率は30%程度にとどまります。 実は、日本の在宅医療は、同一チームが24時間連続で対応し、感染症や心不全なども包括的に治療できる点、そして介護との連携が進んでいる点で、フランスよりも先進的と言えます。しかし、フランスの医師に「日本の診療報酬レベルで24時間働けと言われたらストライキする」と驚かれたように、持続可能性を重視するフランスと、根性論に頼りがちな日本との価値観の違いも痛感しました。

「延命」と「安楽死」の狭間にあるもの
フランスでは現在、「aide à mourir(死への援助)」を認める法案の審議が進んでいますが、このホスピスの院長は「わたしたちは積極的治療には反対だが、安楽死にも反対だ」と明言しました。 不合理な「治療のための治療」を拒む一方で、「死を与えること」も拒む。その間で苦痛を徹底的に減らし、患者の意思を尊重する。彼らは医療の役割を「殺さないこと」ではなく「苦痛を軽くし、見捨てず、無益な侵襲もしないこと」と再定義しています。 安楽死という新たな目的が生じることを警戒しつつ、延命治療と安楽死の間にある豊かな価値に患者や家族が気付けるよう努力を続けているのです。

医療制度や専門職の行動規範は、その国の文化そのものです。AIが教科書的な知識を教えてくれる時代に、現地の空気と生の声から得た学びは非常に価値あるものでした。日本の医療者も、自らの医療の価値とあり方について、もっと堂々と主張していくべきだと思います。

 

ページ先頭に戻る