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ただ、そばにいること / 岩本 ゆり(看護小規模多機能型居宅介護もりや)
■在宅医療の究み
何かをするわけではなく、ただ側にいること。
それを許されることがどんなに稀有で貴重なことか。
それを自覚している医療関係者はどのくらいいるだろうか?
専門職だから耳を傾けてもらえるのではなく、この人の言う事だから耳を傾ける。利用者さんにとって自分がそんな存在になるには何が必要なのだろうか。
在宅は利用者との契約で成り立っている。ひとたび拒絶されれば、誰もその人にアプローチできなくなり、孤独になる可能性も十分にある。まず医療や福祉と繋がるために。そしてその人がその人らしさを表現できるために。その人の意思を汲み取るまでの下支えが肝心だ。
信頼してもらえなければ、利用者さんは簡単に病院へ戻ってしまう。
安心できる環境をつくり上げてはじめて在宅生活は幕を開ける。
「下の世話をされるくらいなら入院する」と言っていた方が、「この人になら最期まで自分を任せられる」「家族のごたごたも聞いてもらって一緒に悩んでもらいたい」、そう思えてはじめて、在宅で最期まで暮らすことができる。
在宅看取り率をあげようと、最新の医療機器を用意して、再入院を防ぐための医療、ケアを準備しても、絵に描いた餅にしかならない。
「自宅で死にたい」という言葉を聞くことがゴールじゃない。
その言葉の先、ではどうやってそれをかたちにするのかを一緒に考える人とならなくてはいけない。
もしあなたが利用者なら、どんな人に側にいてほしいだろう。
甲高い声で早口に医療用語を繰り出す人をベッドから見上げてどう思うだろうか?
声のトーン、たたずまい、無言でいる時間が心地よいか否か。
オーラとでも言うのだろうか?
その人の生き様がそのまま反映されるのが在宅医療のおもしろいところであり、怖いところだ。
ただ、そばにいることができる人になる。問われているのは、あなた自身である。
※看護小規模多機能型居宅介護(かんたき):「通い」「泊まり」「訪問介護」「訪問看護」の4サービスを1つの事業所で一体的に提供する介護保険サービス。医療依存度の高い方やがん末期、看取り期の方でも、住み慣れた自宅や地域で安心して暮らし続けられるよう柔軟に支援します

犬が大好きな97歳の利用者様。「ベッドに乗せて」「お腹に乗せて、一緒に寝たい」とおっしゃり、愛おしそうになでておられました。病院では難しい“その人らしい願い”に寄り添えるのも、看護小規模多機能型居宅介護(かんたき) ならではの日常です。