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在宅で出会う「マルモ」を整え直す —多疾患併存を、チームで見立てるための共通言語—
■在宅医療ペディア

2026年6月25日、悠翔会の法人内カンファレンスとして、南砺市民病院 内科部長の大浦誠先生をお招きし、「在宅で出会う『マルモ』を整え直す」をテーマに学びました。
「マルモ」とは、マルチモビディティ、多疾患併存のことです。在宅医療の現場では、複数の病気を抱え、複数の薬を飲み、複数の専門職が関わりながら生活している患者さんに多く出会います。一つひとつの病気に対しては正しい治療であっても、それらが重なることで、薬の数、通院、指導、家族の介護負担が増え、本人の生活を圧迫してしまうことがあります。
今回提示されたのは、78歳男性のケースです。心房細動、慢性腎臓病、2型糖尿病、COPD、腰痛、不眠、軽度認知症があり、内服薬は11剤。最近は夕方からぼーっとする、歩行時にふらつく、食欲が落ちる、妻が服薬管理に疲れている、といった変化が見られていました。
このケースの課題は、「薬が多い」という一点だけではありません。看護師はふらつきや傾眠を気にし、薬剤師は薬剤数や睡眠薬を気にし、歯科衛生士は口渇や義歯の不具合を気にし、ケアマネジャーは妻の疲弊を気にしていました。それぞれの職種が違和感を持っていても、共通の言葉で整理されなければ、「なんとなく気になる」で止まってしまいます。
そこで大浦先生が紹介したのが、「マルモのトライアングル」です。1つ目は、疾患だけでなく、薬剤、心理社会的問題、治療負担、介護・支援体制まで同じ重みで並べる「拡張型Problem List」。2つ目は、患者さん本人の力を高め、治療負担を下げる「バランスモデル」。3つ目は、介入を足し算・引き算・掛け算・割り算で整理する考え方です。
この視点でケースを見直すと、解決の糸口が見えてきます。睡眠薬やPPI、NSAIDsなどを見直すことは「引き算」。口腔ケア、義歯調整、栄養介入、ACPの話し合いを始めることは「足し算」。服薬整理と口腔ケア、食事改善を組み合わせることは「掛け算」。服薬回数や指導内容を絞ることは「割り算」です。
その結果、薬は11剤から8剤へ、服薬回数は1日3回から2回へ整理されました。ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中止により日中の覚醒が良くなり、転倒も減少。義歯調整と口腔ケアによって食事量が増え、妻の服薬管理の負担も軽減されました。さらに、ACPの話し合いも開始されました。
今回の学びは、「この薬、本当に必要?」という問いを、医師への指摘ではなく、チームで生活を整えるための共通言語にすることです。薬を減らすことも、生活を支える立派な処方です。疾患名だけでなく、治療負担や家族の疲弊、支援体制まで同じテーブルに並べることで、多職種それぞれの気がかりが、具体的な介入につながります。
マルモは、ただ整理するものではなく、本人の生活に合わせて整え直すものです。明日からの現場でも、まずは一人の患者さんについて、疾患、薬剤、生活、支援体制を並べてみる。そして、小さく一つ試し、次回続けるか、戻すか、変えるかを話し合う。その積み重ねが、在宅医療におけるマルモへの向き合い方を、チームの力に変えていきます。