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「エンシュア」処方制限の結末とは!? 栄養治療の手段を守った「現場の声」と残された課題
■在宅医療ペディア
栄養治療の「武器」は守られた
一時はどうなることかと危惧された「医薬品栄養剤(ONS)」の処方制限問題ですが、とりあえずほっと一安心という結果になりました。
自民党と維新の会の幹事長合意により、処方の対象を「術後」と「経管栄養」だけに限定するという方針が示されていました。しかし、示された改定案では、以下の条件において引き続き処方が可能となりました。
• 必要な栄養を食事により摂取することが困難な患者であること
• 医師が栄養状態を維持するために医薬品ONSが必要であると判断した場合
現場と学会の連携が状況を動かした
この変更は、決して自然に決まったわけではありません。 改正医療法で高齢者の低栄養支援の強化が附帯決議されていたことに加え、日本老年医学会、日本臨床栄養学会、日本在宅医療連合学会など、関係する多くの学術団体から見直しを求める意見書が提出されました。また、多くの現場の医療者によるパブリックコメントへの協力もありました。 こうした「現場の声」が、栄養治療の手段を守り抜いたと言えます。
「処方して終わり」からの脱却を
国際的にも成人の低栄養は介入すべき「疾患」として注目されており、日本でもGLIM分類の運用が始まっています。医薬品ONSは通常の食品よりも治療の実効性が高いことも示されています。
しかし、忘れてはならないのは、医薬品ONSの処方はあくまで「手段の一つ」に過ぎないということです。 真の目的は、治療可能な低栄養に対して効果的な支援を行い、肺炎や骨折といった脆弱性疾患の発症を防ぎ、入院や死亡のリスクを低減させ、患者さんの生活の質(QOL)を高めることにあります。
現状では、十分なアセスメントが行われないまま、漫然と医薬品ONSが処方されているケースがあることも事実です。 今回の処方適応をめぐる大きな議論が、単に「薬が守られた」だけで終わるのではなく、医療現場における栄養ケアへの関心を高め、より適切な介入へとつながるきっかけになることを強く期待しています。