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〈在宅医療の究み〉暮らしから拾うヒント/渡部 寛史(ノビシロクリニック藤沢、院長)

渡部 寛史(ノビシロクリニック藤沢 院長)
ロングボードがありましたけど、サーフィンされていたんですか?
藤沢という土地柄なのか、訪問するとご自宅にサーフボードが置かれていることがあります。診察がひと段落したとき、そっとそんな話題をふってみると、嬉しそうにサーフィンの話をしてくださることが多いんです。私も趣味でマリンスポーツをしているので、ついこちらも聞き込みすぎてしまうことがあります。
サーフボードに限らず、暮らしの中にある“その人らしさ”を感じるものが目に入ったときは、会話の流れを見ながら話題にしてみます。病院という場所のイメージから、医師には病気の話しかしてはいけない、と思われている方は少なくありません。でも、こうした何気ないきっかけから、皆さんがほっとしたように日常のことを話してくださる瞬間があります。そこから、お互いの距離が自然と近くなるのを感じます。
日々の暮らしの話や好きなことの話を聞いていくうちに、「この方はこんな表情をするんだ」「こんな時間が好きなんだ」といった、その人ならではの輪郭が浮かんできます。それは、診察だけではわからない部分でありながら、暮らしを支えていく上でとても大事な手がかりになることが多いと感じています。
どんな話が、その人の心を軽くしたり、笑顔につながるかは出会ってみないとわかりません。だからこそ、私自身も地域を歩いてみたり、好きなことを増やしてみたり、いろんな分野のことを知ろうとしたりしています。
病気を診るだけでなく、その人の暮らしを一緒に感じながら関わっていく──そんなかかわり方をすることで、その方の人となりや人生に近づけると感じています。