ニュースレター
尿道カテーテル管理を、専門医の視点から考える
■在宅医療ペディア
2026年10月8日の法人内カンファレンスは、悠翔会在宅クリニック柏が担当。同院に泌尿器科専門医の根本先生が加わったことを機に、「泌尿器専門医に聞きたいQ&A」を企画し、医師・看護師から寄せられた疑問を取り上げました。カテーテル交換の基本から、閉塞や尿の脇漏れ、挿入困難への対応まで、在宅の現場で判断に迷いやすいテーマを幅広く検討しました。
カテーテル選択は「太くすればよい」わけではない
カテーテルの太さは、排液の確保だけでなく、尿道への負担や感染、違和感も踏まえて選ぶ必要があります。根本先生からは、尿道カテーテルの径は14Frまたは16Frを基本とし、理論上はシリコン製の閉鎖式回路が望ましいとの説明がありました。閉塞を防ぐ目的で安易に太径化しても、かえって尿道損傷などのリスクを高める可能性があります。
また、外尿道口の消毒については、有効性を示す根拠がなく、国内外のガイドラインでも推奨されていないことが紹介されました。慣例として続けている処置も、その目的や根拠を確かめることが、適切なカテーテル管理につながります。
閉塞、脇漏れ、尿の色。それぞれの背景を見極める
カテーテルが閉塞した場合は、交換が基本です。閉塞を繰り返す場合も、サイズを上げたり、特別な種類のカテーテルに変更したりすれば解決するとは限りません。カテーテルの種類による差は明確でなく、抗菌薬の予防的な継続投与も推奨されていません。閉塞や症候性尿路感染を繰り返す場合は、泌尿器科に相談し、膀胱瘻を含めた管理方法を検討することも選択肢となります。
尿の脇漏れは、カテーテルの閉塞だけでなく、膀胱の無抑制収縮が関係する場合もあります。閉塞がないのに漏れが続く場合は、膀胱の状態や便秘の有無など、別の要因にも目を向ける必要があります。
紫色尿バッグ症候群についても質問が寄せられました。根本先生は、バッグやカテーテルの交換時期を一時的に早めても、改善の意義は乏しいとの見解を示しました。色の変化だけに反応して交換を急ぐのではなく、症状や患者さんの状態を踏まえて判断することが大切です。膀胱洗浄についても、実施頻度や注入量に明確な根拠があるわけではなく、一律の対応にしない視点が共有されました。
挿入困難の背景には、身体の変化も関係する
質疑では、前立腺肥大症とパーキンソン病があり、両股関節の拘縮が進んだ79歳男性の事例も取り上げられました。尿道カテーテルの挿入が難しくなっている状況に対し、根本先生が着目したのは、前立腺だけでなく、拘縮ややせに伴う尿道の角度変化です。恥骨周辺の脂肪が減ることで尿道球部から膀胱頸部にかけての角度が急になり、挿入しにくくなる場合があるとして、先端が上向きに曲がったチーマンカテーテルを提案しました。
挿入時には、十分にゼリーを塗り、陰茎を牽引してカテーテルを進めます。尿の流出を確認した後、さらに2〜3cm進めてからバルーンを膨らませることも重要です。カテーテルが膀胱に到達する前にバルーンを膨らませると、偽尿道の形成につながるおそれがあります。挿入に抵抗がある場合は無理に進めず、専門医への相談を検討します。
今回のカンファレンスを通じて確認されたのは、閉塞や脇漏れ、挿入困難といった症状に対し、決まった処置を当てはめるのではなく、その背景を見極めて対応を選ぶことの重要性です。基本となる器具選択と手技を押さえながら、患者さんの身体状況や症状の変化に応じて判断する。その積み重ねが、在宅での安全なカテーテル管理を支えます。