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「そうなのよ」を引き出す/片岡 侑史(ココロまち診療所、院長)

■在宅医療の究み

 

患者さんやご家族との信頼関係を築くことの重要性は、誰しも理解していることだと思います。ただ、在宅医療の現場で日々多くの方と接していると、それが簡単ではない場面もしばしばあるでしょう。理由はさまざまですが、その一つに「時間が限られている」という状況があると感じています。

 

診察にかけられる時間が限られていること。残された人生の時間が限られていること。そうした中で、できるだけ早く信頼関係を築くにはどうすればいいのか。誰もが一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。

 

私の場合、患者さんやご家族から「そうなのよ」を引き出すように接しています。短い時間の中で、何度も「そうなのよ」を引き出せると、この人は自分のことをわかろうとしてくれている、わかってくれている、と思ってもらいやすいと感じています。

 

そのためには、診療情報提供書の内容把握はもちろんのこと、ケアマネジャーさんや訪問看護師さん、ご家族など、すでにかかわっている方々から得られる情報が非常に重要です。それらを踏まえたうえで、「以前こういうことがあったんですよね」「今はこういう辛さがあると聞いていますよ」といったかかわりをすると、「そうなのよ」と返ってきて、そこからさらに想いが吐露されていくことが多いように感じています。

 

もっとも、「みんなわかっていますよ」という態度を示すことで安堵される方ばかりではありません。人は誰しもわかってほしいという気持ちをもっていますが、一方で、そんなに簡単にわかった気になられても釈然としない、という方もいらっしゃいます。

 

在宅医療では、事前に得た情報に加えて、実際に話したときの相手の反応をみながら、その方の性格や距離感を感じ取り、言葉を選んでいく必要があります。その場その場の「ライブ感」が求められる難しさがあり、同時に、とても人間らしい分野だとも感じています。そういった意味で、在宅医療はAIに取って代わられにくい領域といえるのではないでしょうか。

 

片岡 侑史(ココロまち診療所、院長)

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