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〈となりのゆうとくん〉「自分がかかりたい診療所」で働いています / 嶺島浩子(パナウル診療所 看護師)

——嶺島さんは、パナウル診療所の初代院長・古川誠二先生の時代から勤務していますが、今、診療所は嶺島さんにとってどのような職場ですか?
私にとっての働く場は、「自分がかかりたい診療所」です。一緒に働くスタッフにも、労働環境にも、すべてに満足して仕事をしています。
パナウル診療所では外来診療を行っていますが、さまざまな病気や不安を抱えた方が扉を開いて入ってこられたとき、受付のスタッフが優しい笑顔と声掛けで迎えてくれるのです。患者さんのほっとする様子がこちらにも伝わってきて、そばで見ていてときどき感動しています。

身体の悩みや痛みを抱えた方がまず望むのは、安心感だと思います。お話を聴き、思いを共有して、一緒に先生に相談してみましょうか、と気持ちに寄り添う。すると表情が緩み、さらに診察を終えたあとは、「来ただけで症状がよくなった」と笑って帰られる方もいます。

嶺島浩子(パナウル診療所 看護師)

 

——人口約5000人の島ならではの患者さんとの関係もありそうです。
ほとんどの患者さんが知り合いです。生活背景まで知っているからこそ、「この方をなんとかしなくては」という気持ちが強くなります。診療所以外の生活の場も同じなので、街中を歩いているときも、買い物をしているときも、患者さんと顔を合わせます。そのたびに、「その後、具合はどうですか?」と声を掛けることができるので、その点でも安心してもらえていると思っています。

 

今日、帝京大学の大学院に通う看護師の方が見学に来られていたのですが、診療の様子をご覧になった際、患者さんの病気だけでなく、生活をサポートしている部分がすてきだった、と伝えてくださいました。先生が、認知症の患者さんの運転免許の更新について家族にアドバイスをしたり、患者さんそれぞれの仕事内容を把握したうえで細やかな助言をしたりというのは、わたしたちにとってはごく普通のことではあるのですが、彼女から見ると新鮮だったそうです。それらが、患者さんがよりよく生活するための手助けとなっているのであればうれしいなと、しみじみ感じました。

「病気ではなくて人をみる。わたしたちは、その人が通常の生活に戻れるお手伝いをしているだけだよ」という古川先生の言葉を思い出します。

 

そして、私を奮い立てる強力な存在が、現院長の小林真介先生です。
小林先生の責任感の強さは、いつも感銘を受けるほどです。診療所を訪れてくれた以上はと、その方の受診後の状態も常に気にかけています。診療所で完結できない領域や地域であれば他の医療機関に紹介し、最後まできちんと見届ける。その徹底ぶりと情熱が私は大好きです。

 

——2023年には、「医師による遠隔での死亡診断をサポートする看護師を対象とした研修会」を受講しています。
医療資源が不足する中で、自分の判断が患者さんに影響するわけですから、プレッシャーは非常に大きいものです。死亡診断のサポートを行う機会はまだないのですが、何かあったときには行動できるようにしておかなければならないと思っています。

 

——島で働き続ける気持ちを教えてください。
夫の故郷である与論島に28年前に移住し、その後、古川先生に声をかけていただいて看護師の仕事に復帰しました。この島に受け入れてもらい、全力で守らなければならないものを得たり、失ったり、そんな経験を積む中で、若い頃とは違い多少なりは人をみる力を養えたのか、「任せてね!」という気持ちで患者さんに対応できるゆとりが生まれました。
私を受け入れてくれたこの島の方たちに、私ができることをしたい。安心して暮らしていけるお手伝いをしたいと、毎日思っています。診療所のスタッフに出会うことができ、心を一つにして仕事ができることに喜びを感じています。

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