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〈在宅医療ペディア〉“水だけじゃ危ない”。夏の脱水と塩分補給の正しい知識

秋の風も感じられるこの頃となりましたが、依然として熱中症への警戒は必要です。熱中症は「高温」「湿度」「風通し」に加えて、「脱水」の進行が大きな要因となります。脱水が進むと発汗できなくなり、体に熱がこもり、さらに熱中症を悪化させる悪循環に陥ります。

 

⚫︎脱水の進行とリスク

体重のわずか1〜2%の水分喪失で口の渇き、軽い倦怠感、尿量減少、3〜5%でめまい、頭痛、集中力低下、心拍数の増加が起こりえます。6%以上だと混乱、極度の疲労、血圧低下、発汗停止が見られ、10%以上になると意識障害、腎機能不全、循環ショック、死に至る可能性も。特に高齢者や乳幼児は脱水リスクが高く、早期の対応が重要です。

 

⚫︎意外と多い「発汗量」

「そんなに汗は出ない」と思うかもしれませんが、軽作業でも1時間に500〜1,000mL、中〜重労働では1〜2Lの発汗が起こります。屋外で草むしりや庭木の手入れを3時間行うと、最大で3〜6Lの水分を失う可能性があるのです。

 

⚫︎水だけでは不十分~塩分補給の必要性~

汗には1Lあたり約1gのナトリウム(食塩に換算すると約7.5g)が含まれます。水や麦茶だけを大量に摂取すると体内の塩分濃度が下がり、「低ナトリウム血症」を引き起こし、頭痛・吐き気・筋肉のけいれん・意識障害などの症状が出ることがあります。

 

⚫︎身近な補給法

外出前に梅干しを1〜2個食べておくのも良いかもしれません。昔ながらの梅干し1つには2.5〜3gの塩分が含まれます。発汗の多い日にはラーメンやそばのつゆを残さず摂るのも一案かもしれません。ただし、心不全や腎不全、肝硬変などで塩分制限のある方は必ず主治医に相談してください。

 

わたしたちが大切にしたいのは「命を守るための小さな備え」です。熱中症は予防が可能な病気であり、脱水や低ナトリウム血症を避けるための正しい知識があれば、多くのリスクは減らせます。体調や疾患の有無に応じた個別対応も含め、患者さんやご家族と一緒に“夏を安全に乗り切るための工夫”を広げていきたいと考えています。

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