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医療法人社団悠翔会
整形外科・リハビリテーション科
野口 昌彦
医学博士・整形外科専門医・リハビリ専門医
リウマチ専門医・スポーツ医
前・東京女子医大整形外科助教授
了徳寺大学健康科学部教授
出身
・京都府立医大
主な経歴
・カリフォルニア大学客員研究員
・ピッツバーグ大学客員研究員
・京都府立医大講師・東京女子医大講師

 
 在宅医療の世界では、リハビリの体制はまだまだ貧弱です。寝たきりになることが避けられるケースでも、主治医や介護者のリハビリに対する関心が低いために適切な介入が行なわれず、身体機能が悪化し、動けなくなっていくケースが少なくありません。また、リハビリが行なわれていても、治療の内容や理学療法士の力量などにより、十分な効果が上げられていないケースもあります。当院では、リハビリによる治療効果を最大限引き出すため、リハビリ専門医の訪問診療と訪問リハビリを一体的に行なっています。また、理学療法士のスキルアップのために、研修や症例検討会などを行なっています。

 わたしたちは、リハビリテーションは高齢者の生活の質を向上させるための重要な治療手段であると考えています。身体機能の向上は、生活の質の改善や活動範囲の拡大に、そして、それは高齢者の生きがいにつながります。また、介護負担の軽減、室内事故のリスク軽減にも役立ちます。当院では、リハビリ専門医を中心に5名の理学療法士・作業療法士が在宅リハビリテーションを提供しています。専門医を中核とした充実した体制で、患者様ごとにもっとも効果のあるリハビリプログラムをご提案します。


 

訪問リハビリで実施する主なプログラム

 訪問リハビリで実施するのは、大きく分けると、[身体機能の改善]を目標としたもの、[日常生活動作の改善]を目標としたもの、[より安全な療養生活を送るためのご本人・ご家族・介護者に対するアドバイス]の3つです。

 標準的な訪問リハビリテーション(40分間)では、はじめとおわりの問診・バイタルチェックを除き、4種程度を実施しています。体力的・時間的に余裕のある患者様は、種類を増やし、60分以上実施することもできます。

 目的意識と目標を持って取り組むことが成功の秘訣です。

 

はじめに

■問診(体調、疼痛、精神状態など)
■バイタルチェック(血圧・脈拍・体温など)

身体機能の改善

□リラクゼーション、関節可動域の訓練
□筋力増強運動
□バランス能力向上運動
□起居動作の練習(寝返り、起き上がり、立ち上がりなど)
□移動動作の練習(歩行・階段昇降など)
□自主トレーニングのアドバイス

日常生活動作の改善

□移乗動作の練習(車椅子やトイレへの移動など)
□入浴動作の練習
□整容動作の練習(歯磨き、洗顔、整髪など)
□更衣動作の練習
□食事動作の練習
□家事動作の練習
□書字動作の練習

助言・提案

□福祉用具や住宅改修の提案
□精神的支援や社会参加支援の情報提供
□より安全な生活動作方法のアドバイス
□ご家族への介護方法のアドバイス(介護動作の指導など)

おわりに

■問診(体調、疼痛、精神状態など)
■バイタルチェック(血圧・脈拍・体温など)

 

このような方は特に効果が期待できます。

 どなたでも目標を持ってしっかりと計画的に取り組めば、リハビリテーションは有効ですが、特に以下に該当する方には、より大きな有効性が期待できます。
 

退院直後の方

 特に骨折後、脳梗塞・脳出血などで入院されていた方。退院直後からの訪問リハビリ導入が有効です。逆にリハビリを実施しないと、筋力の低下や関節の拘縮が進みやすく、寝たきりのリスクが増大することがわかっています。

 入院中に実施されていたリハビリを引き継ぐ形で、訪問リハビリを導入することが一般的です。安全な動線の確保や、福祉用具・住宅改修のアドバイスなどもいたします。


麻痺の残っている方

 脳梗塞や脊髄損傷などで麻痺の残っている方。特に不全麻痺(機能は低下しているが完全な麻痺ではない状態)の方は、リハビリによる筋力強化や関節可動域の拡大で身体機能を改善できる可能性が高く、積極的なリハビリの効果が期待できます。


 失われた機能の回復のみならず、将来的な褥創や骨折のリスク、ご家族の介護負担を軽減できます。筋肉の凝りや痛み、関節の拘縮などが顕著な場合、訪問マッサージと組み合わせると効果的です。


筋力の低下している方

 筋肉は加齢とともに減少します。元気な方でも、70歳になると、20歳のころの約半分に。特に大腿四頭筋や腹直筋など、体を支えるために必要な筋肉ほど減少が顕著です。筋肉はまったく動かさないと、1日で1%減少します。高齢の方は、 1週間程度の臥床で歩けなくなってしまうことも。


 訪問リハビリによる定期的な筋力トレーニングや機能訓練で、寝たきりの予防、運動能力のアップを期待できます。その人の運動能力に合わせたトレーニングプログラムをお作りします。

 

安全で効果的なリハビリを行なうために

 訪問リハビリでは、その方の体力や目的に合わせて、最も効果的なプログラムを個別に作成し、実施します。しかし、誰でもリハビリだけを行なえば順調に回復する、というわけではありません。リハビリの努力を成果につなげるために、特に大切なのは[身体機能]と[栄養状態]の評価、そして医療との連携です。特に、訪問リハビリの場合は、在宅での状態を適切に判断する必要がありますが、これは病院の外来ではなかなか難しいものです。そのため、当院では、在宅主治医とリハビリ専門医、理学療法士との院内連携を強化しています。
 

リハビリの効果を引き出すための条件1
障害の原因、身体機能を正しく診断する。

 動けなくなった原因は何か?まずは、正しい診断と残存機能の評価が重要です。診断が間違っていると、適切なプログラムが作れないケースがあります。

CASE

 80代の寝たきり女性。病院主治医より認知症による自発性の低下が原因と診断されていた。リハビリの対象外とされ、急速に身体機能の低下が進行していた。(要介護4)

 

 整形外科医の診察により脊柱管狭窄症が寝たきりの原因、リハビリが有効と診断。訪問診療と平行し訪問リハビリを導入、1年後、一人で外出が可能な状態に。


リハビリの効果を引き出すための条件2
しっかりと栄養状態を管理する。

 栄養状態が悪ければ、どんなに筋力トレーニングをしても、筋肉はつきません。機能回復を本気で考えるのであれば急がば回れ。まずは栄養状態の改善から。

CASE

 胃切除後の80代男性。手術後、口からの食事がほとんど摂れず、筋力が急激に低下。ほぼ寝たきりの状態であり、リハビリの効果も得られず、関節の拘縮も始まっていた。

 

 在宅主治医は栄養状態の改善が先決と判断し、中心静脈栄養法(IVH)を導入。その後、リハビリ再開とともに筋肉量は順調に回復。歩行・外出が可能な状態に。


訪問マッサージと訪問リハビリの違いは?

 訪問マッサージと訪問リハビリは、イメージが似ていますが、その目的と内容は異なります。

 訪問マッサージは痛みやコリなどの症状を緩和するための治療を主な目的とし、主に鍼灸師や柔道整体師が往療を行ないます。

 訪問リハビリは、痛みの治療ではなく。運動機能・生活能力の回復を目的としています。理学療法士や作業療法士が訪問し、筋力や作業能力の強化、関節可動域の拡大などを中心に治療を行ないます。(なお、必要な場合は、訪問リハビリでも筋肉や関節の症状を緩和するためのマッサージを実施します)

 訪問マッサージは医療保険、訪問リハビリは介護保険が適用となります。目的に応じて使い分けることが重要です。また、上手に組み合わせることによって相乗効果が期待できるケースもあります。


当院の取り組みが紹介されました。

 クロワッサン2008年7月10日号に、当院のリハビリテーションへの取り組みが紹介されました。